おうちでスタバ(悪ふざけ)

マチコが一階に降りると台所には誰もいなかった。ヒーターがついていないと3月下旬の今でも肌寒い。

テーブルの上には、誰かが勝手に持ち出したのだろう、マチコのカッターナイフが置かれていた。マチコは眉をしかめた。お気に入りのなのに。それに、刃が小型で切れ味の良いものを選んだから、少し高かったのに。

戸棚からマグを取り出し、お茶を注ぐ。口をつけると生温かった。

大学が決まってからもう何日も経つというのに、マチコはまだ大学生になる気がしないでいた。同級生たちのように遊びにいく気もない、堅実にアルバイトを探す気もない、そのくせ暇を持て余してだらだらと締まりのない生活を送っていた。何もやることがないわけではなかった。週が明けたら4月がやって来て、そしたらもう入学式だ。送られてきた書類に記入し、伸びた髪を切り、すかすかのクローゼットを埋めるだけの服を買いに行かなければならなかった。やらなければいけないことならたくさんあった。

冷蔵庫の横には女神のイラストの紙切れが貼り付けられている。ずいぶん前にマチコが貼り付けたのだ。女神は目も口も鼻も鉛筆で塗りつぶされ照明に鈍く光っていた。マチコはつまらなさそうな顔をして紙切れを剥がし、それを眺めた。セロテープでそこに留めた時のことを思い出してますますくだらないという気持ちになったが、暇つぶしになりそうなことを見つけて意識はそちらへ向いていた。テーブルの端へおもむろに手を伸ばす。黒い細身のカッターナイフはひんやりとしていた。

そしてマチコは意を決したようにカッターナイフを手に部屋へ引き上げると、

 

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彫り終わった消しゴムはんこに丁寧にインクをつけながら、マチコは緑色のインクを買っておけばよかったと思った。それをコップに押してコーヒーを注いだら外に出なくてもスタバ気分が味わえると思ったのだ。

 

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家にはコーヒーもラテの素もなかったので仕方なくほうじ茶を煎れました。

 

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読んでくださってありがとうございました。